Another daily life 第1話
プライスレス




大きな木のある小さな家の前、首都プロンテラの一角。男と女が座り込み他愛の無い会話をしていた。

「ちわー」

男がこちらに気付き、声をかけてきた。

「こんちゃ」

女もつられて振り向き口を開く。それぞれに軽く挨拶をして私は木の傍に腰を下ろした。ここはギルド「ハロウィンの面影」の溜まり場でメンバー同士の憩いの場となっている。これから狩りに行く者、帰ってきて休息をとる者、ただ話をしに来る者など様々で夜になると人が増え、隣のギルドとの交流も盛んだ。私も例外ではなく、仕事を終えて暇を持て余しここへやってきた。
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「姐御、暇なら名無し行かない?」

姐御とは私のことだ。恐らくこの中では一番年下なのだが何故かそう呼ばれている。最近はこの3人で、少し前に発見された名も無き島にある修道院(通称“名無し”)へモンスターを狩りに行くことが日課となっていた。

「おー行く行く」

二つ返事で決まり、それぞれ準備のためにグラリスさんの所へ向かった。グラリスさんはこの付近に派遣されているカプラ職員で狩りに必要な武器や防具、その他のアイテムなどを預かってくれる。長い黒髪に眼鏡、メイド服のような制服を着て今日も街角に立っていた。

「グラリスさん、いつものお願いできますか?」
「ブルージェムストーン200個、それから盾と鎧ね。はいどうぞ。貴女達、本当に懲りないわね!」

彼女がそう言うのには訳があった。私達3人はいつも“名無し”へ行き、こてんぱんにやられて帰ってくる。レアがあるわけでもなく稼ぎの少ない狩場なのに何度も瀕死になっては挑戦を繰り返していた。
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「楽しければいいんです!」

倉庫の利用料を支払いアイテムを受け取ると溜まり場に戻りパーティーを組んだ。回復や支援を生業とするハイプリーストの私と、大魔法で敵を殲滅するウィザードの蓬=ヨモギ、楽器の演奏でメンバーの能力を高めるバードの壱慶。3人はお金や経験値よりも“名無し攻略”を楽しむことを目的としたチーム「プライスレス」を結成している。溜まり場に来る時間帯とレベルが近くパーティーを組むにもそれなりにバランスは良い職業の組み合わせだが、回復・支援の私が前衛を兼ねているため耐え切れず倒れることもしばしば。それでもいつか報われる日が来ることを夢見て互いの“腕”を磨いている。

「お金や経験値よりも」と言ったが、“名無し”で安定した狩りが出来るようになれば楽しさだけでなく経験値がたくさん入る。稼ぎは少なく寧ろ赤字だがそれだけの価値がある狩場だ。毎度瀕死になって帰還するため今は“お察し”程度の経験値にしかならないが、気の合う仲間との狩りはそれだけで楽しかった。

チーム「プライスレス」ではメンバーを募集しております。


名無しに着くと、他にも3~5人程度のパーティーが何組か狩りに来ていた。
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by arimun | 2009-02-04 14:12
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